Supply Reliability as Management Quality
| 供給信頼性は、サプライチェーン部門だけの成果ではない。企業のリスク認識、判断、実行、回復の能力が表れる「経営品質」である。 |
医薬品の価値は、開発され、承認され、製造された時点で完成するわけではありません。
必要とする患者さんのもとへ、必要な品質の医薬品を、必要なときに確実に届けられて初めて、その価値は医療として実現します。
その意味で、供給は単なるサプライチェーン上のオペレーションではありません。AXION PARTNERSは、供給信頼性を「経営品質」の一つとして捉えています。
欠品は「結果」である
医薬品の供給問題が発生すると、在庫、生産計画、物流といった個別の問題に目が向きがちです。しかし、欠品や供給制限は最終的に表面化した結果にすぎません。
その背景には、需要予測、在庫政策、製造能力、品質、原薬・原材料、外部委託先、物流、規制、組織間連携、意思決定など、多数の要素が複雑に関係しています。
FDAのDrug Shortages Task Forceは2019年の報告書で、医薬品不足の根本原因を大きく3つに整理しています。その一つとして、成熟した品質システムへの投資が市場で十分評価されていないことを挙げるとともに、供給障害発生後の回復を難しくする物流・規制上の課題を指摘しました。
また、2013年から2017年に不足した医薬品についてFDAが2020年に再分析した結果では、供給量が不足前の水準まで完全に回復したものは30%でした。これは、供給問題を「在庫を増やせば解決する問題」として扱うことの限界を示しています。
供給信頼性に表れるのは、企業の組織能力である
供給を継続できる企業には、いくつかの共通した能力があります。どこに重大な脆弱性が存在するかを理解していること。変化の兆候を早期に捉えられること。複数の選択肢を準備できること。そして、不確実な状況でも優先順位を決め、組織を横断して実行できることです。
さらに重要なのは、障害を完全に防ぐことだけではありません。問題が起きた際に影響を限定し、供給を回復し、その経験から学べることです。
米国保健福祉省(HHS)は2024年、医薬品不足とサプライチェーン脆弱性について、冗長性やレジリエンスへの投資が十分に促されない市場構造が、供給網を脆弱にし、供給不足からの回復を遅らせていると指摘しています。
つまり、供給結果の背景には、設備や在庫だけでなく、その企業が持つリスク認識、設計、判断、実行、回復の能力があります。だからこそ供給信頼性には、その企業の経営品質が表れるのです。
経営が見るべきものは「在庫量」だけではない
例えば、ある医薬品に十分な在庫が存在していたとしても、唯一の製造拠点が長期間停止し、代替製造所への切替えに一年を要するのであれば、その供給構造が十分に強いとは言えません。
一方で、在庫量が比較的少なくても、複数の供給源、柔軟な製造能力、迅速な意思決定、実行可能な代替手段が確保されていれば、より高い供給信頼性を持つ可能性があります。
したがって、経営が確認すべきなのは「何日分の在庫があるか」だけではありません。次の問いまで含めて捉える必要があります。
• どのようなリスクにさらされているか
• そのリスクが顕在化した場合、どれだけの影響があるか
• どのくらいで供給を回復できるか
• 代替策は、本当に実行可能な状態なのか
• 誰が、どの時点で判断するのか
欧州でもこの方向性は明確になっています。EMAは2026年8月にShortage Prevention Planに関するガイダンスを更新し、医薬品供給網の脆弱性を特定し、供給不足を予防・軽減・管理するための対策を事前に整備することを求めています。
AXION VIEW
| AXION PARTNERSは、Supply Reliabilityを「複雑性と不確実性の中でも、経営と現場が『確実に届けられる』と判断できる状態」と考えます。 それは一つのKPIによってつくられるものではありません。需要、在庫、製造、物流、外部供給、品質、リスク、ガバナンス、そして意思決定を一つのシステムとして設計し、継続的に改善することで形成されます。 供給を守るという行為は、単に欠品を避けることではありません。患者さんへの責任を果たし、顧客からの信頼を守り、事業を継続し、企業としての信用を維持することです。 信頼される供給は、優れたオペレーションの結果であると同時に、優れた経営の結果でもあります。だからこそ、供給信頼性は「経営品質」なのです。 |
参考資料
以下は本文中で参照した公的・一次資料です。閲覧確認日:2026年9月4日。
本稿は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別案件に対する法務・規制・品質保証上の助言を構成するものではありません。
